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2022-03-03 土地に古い抵当権がついていた(登記)

父名義の土地があり、父、母の順に亡くなったものの、長年、父名義のままにしてありました。 唯一の子である私が相続人として自分に名義を変更しようとしたところ、昭和〇年に設定された抵当権がついていることに気付きました。
抵当権がついたままでは売却などの処分ができないと聞いたので抹消したいのですが、抵当権者は個人名で、心当たりがありません。

古い抵当権の抹消

不動産の名義変更をしようとしたことなどをきっかけに登記簿を調べた結果、明治(大正・昭和初期)の抵当権設定登記が残っていることに気付くことがあります。 こうした場合、「全額返しているはずだが、抵当権者の書類が見当たらない」 「抵当権者が行方不明」「抵当権者の会社が解散してもう存在しない」 といった理由から、抹消登記が困難になるケースが非常に多くなります。

このような、長年放置されたまま登記簿に残ってしまっている古い抵当権のことを、「休眠担保権」とか、「休眠抵当権」と呼びます。

仮に全額返していることが明らかであっても、登記簿から抵当権を抹消しなければ、通常、不動産を買ってくれる人はみつかりませんので、 どうにかして抹消する方法を考える必要があります。

抵当権抹消登記申請の申請人

抵当権の抹消登記申請は、所有権者と抵当権者が共同して行うのが原則です。 もし、抵当権者が死亡している場合には、その相続人「全員」と共同して登記を申請しなければなりません。

抵当権者が行方不明かつ古い抵当権である場合の抵当権抹消方法

抵当権者が行方不明で、抵当権の担保する債権の弁済期から20年以上経過している場合には、 債権額・利息・損害金のすべてを供託(国にお金を預ける)すれば、 所有権者単独で抵当権の抹消登記を申請することができます。

債権額・利息・損害金のすべてを用意するとなると大金になってしまうと考える方も多いかと思いますが、 明治・大正や昭和初期の抵当権の場合、債権額が数十円~数千円であることが多く、計算した結果供託額が数千円~数万円で済むことが多いため、 費用や期間の面からこの方法で抹消するメリットが大きい場合も多いです。

本件の場合、現在のコンピュータ化された登記簿謄本だけでは弁済期が分からなかったため、コンピュータ化前の閉鎖登記簿を取得して確認したところ、 弁済期から20年経過していることがわかり、また、債権額・利息・損害金のすべての額は数千円で済むことがわかったため、 供託の方法での抵当権抹消を試みることになりました。

抵当権者が行方不明であることの説明方法

この方法で抹消登記を申請するにあたっては、抵当権者が行方不明であるという事を登記所にどうやって説明するかが問題になります。

実務上は、まずはできうる調査(ケースにより異なりますが、登記簿に記載されている抵当権者の住所・氏名に合致する戸籍や住民票の取得を試みるなど) をし、それでも所在や生死を確認できない場合、抵当権者の登記簿上の住所・氏名宛に受領催告書(債務を支払うので受け取ってほしいと伝える文書)を発送し、 宛所に尋ねあたらないことを理由として返送されれば、その返送された封筒によって登記所に行方不明であることを証明します。

本件では、登記簿に記載されている抵当権者の住所・氏名に合致する戸籍・住民票が存在しないことが調査で分かったため、 抵当権者の住所・氏名宛に受領催告書を送付してみたところ、「記載の町名が無い」旨のメモを貼付の上返送されてきましたので、 債権額・利息・損害金のすべて(計算結果や供託日につき供託書との事前打ち合わせが必要です)を供託することで、 抹消登記をすることができました。

休眠担保権の抹消方法

休眠担保権を抹消する方法としては、次のものがあげられます。いずれの方法が利用できるのかは、 登記簿謄本や閉鎖登記簿謄本、戸籍や戸籍の附票を調査し、予想される期間・費用をも考慮して、総合的に判断する必要があります。 登記の専門家である司法書士にご相談ください。

方法詳細
抵当権者(またはその相続人)の協力を得る 登記簿の情報などから抵当権者を探し出し、連絡を取って事情を説明し、必要書類に押印をいただきます。 抵当権が古い場合には相続が発生していることも多く、その場合には全ての相続人の協力が必要ですので、 難色を示す人が1人でもいれば、その人に対する裁判(後述)を検討することになります。
(抵当権者が行方不明で、弁済期から20年以上経過している場合)債権額・利息・損害金のすべてを供託する 抵当権者が行方不明で、弁済期から20年以上経過している場合には、債権額・利息・損害金のすべてを供託所という国家機関に供託(預けること)すれば、 抹消登記の申請ができます。 明治・大正や昭和初期の抵当権の場合、債権額が数十円~数千円であることが多く、計算した結果供託額が数千円~数万円で済むことが多いため、 費用や期間の面からこの方法で抹消するメリットが大きい場合も多いのですが、「抵当権者が行方不明である」との要件を満たせなければ、 この方法を使うことはできません。書類調査により抵当権者が見つかる事はしばしばあり、会社の場合には行方不明の要件を満たすことはほとんどありません。
(抵当権者である会社が解散していたり、休眠状態である場合)清算人や代表者と共同して登記を申請する 抵当権者である会社が解散・休眠している場合は、「抵当権者が行方不明」には当たらないので、 解散後であれば登記された清算人と、解散しておらず休眠状態であれば登記された代表者と共同で登記を申請します。 清算人や代表者が全員死亡している場合には、裁判所に清算人選任申立をするなどの手続が別途必要になります。
裁判で勝訴して登記を申請する 「被告は原告に対し別紙目録記載の土地につき○法務局昭和2年1月1日受付第○号抵当権設定登記の○年○月○日○○を原因とする 抹消登記手続きをせよ」との判決を得るなどして単独で登記を申請する方法です。 抵当権者の住所氏名は判明しているが連絡が取れないとか、協力を得られないなどの場合には、裁判を検討します。
登記関連訴訟はその後の登記手続を考慮しなければならないので、 「せっかく判決を取ったのに登記申請に使えなかった」という結果になることを避けるため、 登記の専門家である司法書士に依頼することをおすすめします。 古い抵当権の場合には司法書士(認定司法書士に限る)が訴訟代理人となれることがほとんどですし、なれない場合でも、 司法書士に訴状作成をご依頼いただけます。
(抵当権者が行方不明の場合)裁判所に公示催告の申立をして「除権決定」を得る 裁判所に抵当権が消滅していることを証明して、除権決定を出してもらう方法です。 古い抵当権ですと、「抵当権が消滅していること」を証明することができない事も多く、その場合には、この方法を使うことはできません。
(抵当権者が行方不明の場合)抵当権が消滅したことを証する情報を提供する 「債権証書並びに被担保債権及び最後の2年分の利息その他の定期金の完全な弁済があったことを証する書面」と「抵当権者の行方不明を証する書面」を 登記所に提出して抹消する方法です。古い抵当権の場合、弁済があったことを証する書面が残っていることは少なく、その場合にはこの方法を使うことはできません。

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最終更新日: 2022/03/03
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