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2018-07-31 業者に預けた書類を返してほしいが、連絡がつかなくなった(裁判)

ある業者に、業務を依頼し、そのために必要な書類を預けました。 しかし、依頼業務がなかなか終わらず、進捗を尋ねてもはぐらかされるので、 「他の業者に依頼するので預けた書類を返してほしい」と伝えたところ、電話に出なくなり、連絡がつかなくなりました。

書類を返してもらうための裁判手続

依頼業務のために預けた書類が返ってこず、他の業者に依頼するにもその書類が必要であるためにお困りになり、ご相談をいただいたケースです。

預けた書類を返してもらうということであれば、裁判の訴状の内容としては、
「業者との契約を解除したので、預けた物(書類)を返却してほしい」
といったものになります。

しかし、裁判は、結果が出るまでに時間がかかるものです。早く他の業者に依頼しないと、損害が大きくなる可能性があります。 「書類を一時的にでも使用できれば、他の業者にその書類の確認をしてもらった上で、依頼できる」 とのことでしたので、「債権者使用型の占有移転禁止仮処分命令申立」を行うこととしました。

債権者使用型の占有移転禁止仮処分命令申立

仮処分命令申立とは、 「私の権利が害されており、裁判で時間をかけていると被害が大きくなるので、裁判の結果が出る前に一旦仮に権利を守ってください」 と裁判所に説明をして、自分の権利を守るための「仮処分」の命令を出してもらうための申立てです。実際に裁判を起こす前に申立てをすることができます。

仮処分にはいくつかの種類があるのですが、今回は、書類を一時的にでも使用できれば良いので、「占有移転禁止の仮処分」の申し立てをしました。

裁判で物の引き渡しを請求する場合に、裁判の前や裁判中に相手方がその物を第三者に引き渡してしまうと、 物を取り返すことができず、裁判を起こした意味が無くなってしまいます。 そこで、「占有禁止仮処分命令申立」をし、第三者への物の引き渡し等を禁止して、 相手方からその物を取り上げ、執行官(裁判所の機関)に対象物を保管してもらうのです。

また、占有移転禁止の仮処分命令申立の際に、占有移転禁止の旨のほか、 「執行官は、債権者(申し立てをする人)に物の使用を許さなければならない」旨も含んだ 仮処分命令を求め、認められれば、執行官にその物を使わせてもらう(債権者使用型)ことができますので、 裁判を起こす前に、お客様のご要望にお応えすることができます。

保証金の供託

お客様の事情や仮処分の必要性をまとめた申立書を裁判所に提出し、 書記官との打ち合わせを経て書類の修正や資料の追加を完了すると、 保証金を法務局に供託する(預ける)よう、指示があります。

この保証金は、仮処分により相手に損害を与えてしまった場合に、その損害を埋めるために使用されるものです。 緊急に、裁判をせずに、仮とはいえ実際に処分を行うものですので、間違いがあった場合に備えることが求められるのです。 なお、裁判で勝訴するなど、供託の必要が無くなったときには、その旨を法務局に証明することで、供託したお金を取り戻すことができます。

仮処分決定~執行

供託をしたことを裁判所に証明すると仮処分決定が出されますが、今回の場合、これで終わりではありません。

執行官宛に「仮処分執行申立書」を提出し、「仮処分決定が出たのでこれに基づいて執行してください」と、執行官にお願いする必要があります。 申立書には、対象物の詳細(今回は書類)と、対象者、対象の存在する場所を明示します。

申立書が受理され、執行のための費用(執行官の手数料や、鍵業者の報酬など。余りがあれば返却されます)を収めると、 執行官は、執行の日時を決め、執行を行います。 業者の事業所に出向き、本人から執行官へ書類を渡してもらうことになりますが、 本人が不在の場合には、鍵業者に頼んで鍵を強制的に開けることもあります。

結果的に、書類を確保することができ、執行官保管となった書類を使用させてもらう事ができました。

身近なお困りごとの相談は司法書士へ

本件のように、こちらからの要求に相手が反応してくれないとき、 裁判所に用意されている手続き(裁判(訴訟)に限りません)を利用して、早期の解決ができる場合があります。

「法律問題ではないのではないか」「門前払いになるのではないか」などとお一人で悩まず、まずはご相談ください。お役に立てることがあるかもしれません。

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最終更新日: 2019/11/26
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