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2017-09-01 施設に引っ越すことになった母名義の家を売りたい(成年後見、信託、登記)

母が高齢になり、一人暮らしでの生活が心配になってきたので、今住んでいる一軒家から、高齢者向け住宅に入居することを決めました。 母は「自分名義の自宅は売って、入居費用や生活費などに充てたい」と言っていますが、すぐに売れるものでもありませんし、 近い将来、母の判断能力が低下するかもしれず、そうなると、家が売れなくなるのではないかと心配です。

判断能力の低下と売買契約・登記申請

高齢の方の契約に関し、身体的に大変だったり、理解能力に不安があったりといった理由から、子がお手伝いすることは、よくある事だと思います。

不動産の売買の場合には、売買条件を決めたり必要書類を集めたりなどの作業を子が主体となって行った場合でも、 最終的な意思確認の時(契約書や登記申請の委任状などに署名等をいただく時など)に、 ご本人である親御さんに意思表示していただければ、問題無く手続を進めることができます。

しかし、契約当事者ご自身の判断能力に問題があるのではないかと思われる場合には、 ご本人の意思を確認することができず、仮にお子さんが親の実印と印鑑証明書を持っていたとしても、 親の実印の押された委任状と印鑑証明書を持っていたとしても、 不動産会社も、登記申請を代理する司法書士も、手続を進めることができません。

なぜなら、本人の意思能力(自分の行為の結果をわかり、判断できる能力)が無い状態でする契約は、無効となるからです。

売買のお手伝いをする不動産会社と司法書士は、有効に売買を完了し登記を完了する責任があるので、 当事者本人にお会いし、慎重に意思確認を行います。

通常、売買契約から代金の決済(司法書士への登記の依頼を含む)までには 数か月の時間がかかります。例え売買契約時に意思能力があっても、 代金決済時に意思能力が無くなってしまえば、司法書士による意思確認が行えません。そうなると登記名義を変更することができず、 結果として、家を売ることができません。

民事信託の活用

民事信託とは

こうした事態を回避するために、民事信託を活用するという方法があります。

信託と言うと、「信託銀行」を連想し、何やらお金持ちにしか関係ないような気がする方もいらっしゃると思いますが、 必ずしもそうとは限りません。

信託とは、

  • 委託者(財産を託す人)が、
  • 受託者(財産を託され、その財産を管理したり、処分したりする人)に財産を託し、
  • 受益者(財産から収益を得る人)の利益のためにその財産を管理・処分させる

ことをいいます。

自分の財産を他の人に「信じて託する」ということです。

信託は、商事信託と民事信託に分かれます。
商事信託は、信託銀行などのように、営利を目的として行う信託です。
民事信託は、営利を目的としない信託で、親族間で営利を目的とせず行う信託はこちらに含まれます。 また、親族間の信託を「家族信託」と呼ぶ場合があります。

具体例

では、この事例で「民事信託」を活用するとは、どのようなことでしょうか。

まず、お母さんが委託者(財産を託す人)兼受益者(財産から収益を得る人)、お子さんが受託者(財産を託される人)として、 信託契約を締結します。
信託財産(受託者に託する財産)は、お母さんの自宅です。
信託目的は、信託財産であるお母さんの自宅を管理し、必要があれば売却し、受益者であるお母さんのために入居費用や生活費に充てることです。

次に、信託契約に基づき、お母さんの自宅の名義を受託者であるお子さんに移転する登記を申請します。 このように、信託財産の所有権が委託者から受託者に移るのが、信託の特徴の一つです。

お子さんは、受託者として、信託財産であるお母さんの自宅の売買の当事者となります。なぜなら、自宅の名義はお子さんになっているからです。

ですから、お子さんが、売買契約から名義変更の登記申請まで当事者として動き、 不動産会社や司法書士による意思確認の対象者はお子さんということになり、 お母さんが万一意思能力を失ったとしても、信託契約時に意思能力があったのであれば、問題無く最後まで手続きを行うことができるのです。

成年後見制度を利用するとどうなるか

信託契約を締結するなどの対策をしないうちに、お母さんの意思能力が無くなってしまった場合には、 お母さんのために成年後見人を選任してもらい、成年後見人が代理人となって自宅を売るということが考えられます。 例えば、成年後見人の候補者としてお子さんを指定して選任申立をし、家庭裁判所がお子さんを選任してくれたのであれば、 お子さんが代理人となって、自宅を売ることができます。 ただし、ご自宅の売却には家庭裁判所の許可が必要です。

それであれば、信託の場合と似たようなことができるのでは、とも思えます。

しかし、成年後見人を一旦選任すれば、成年後見人の仕事は被成年後見人であるお母さんの生涯に渡り続きます。 家を売ったらおしまい、ということにはならないのです。家庭裁判所に、年に1回、報告をしなければならない負担が、長い間続きます。

また、自宅を売却する許可を家庭裁判所が出してくれないかもしれません。 例えば、自宅を売らなくても他に現預金がいっぱいあり、高齢者施設の入居費や生活費を十分賄えるというようなケースです。 そうなると、「せっかく時間をかけて成年後見人を選任してもらったのに家が売れない」ということになります。

そして、成年後見人の候補者としてお子さんを指定しても、家庭裁判所が他の人(弁護士や司法書士など)を選任するかもしれません。 または、お子さんが成年後見人になり、弁護士や司法書士が後見監督人として就任するということもありえます。 そうなると、成年被後見人であるお母さんの財産から、これらの専門家に対する報酬を支払わなければならない負担が生じます。

民事信託(家族信託)のご相談は司法書士へ

司法書士は、不動産登記や法律の専門家です。上記のような民事信託(家族信託)のご相談をお受けすることができ、 信託にかかわる登記申請の代理を行うことができます。

この事例では、お母さんが受託者兼受益者でしたが、 他にも、「お母さんは自宅を売って子供たちに生前に分け与えたいと考えているが、高齢のため実現できるか心配」というような、 受託者と受益者が異なるケースもあります。この場合には、贈与税のことを考える必要があります。

信託契約は、ご家族の形態やご要望、信託財産に応じて、オーダーメイドの契約となり、税務に関する考慮も欠かせません。 当事務所では、税制や資産運用等に通じた1級ファイナンシャル・プランナーとともにご相談を承り、必要があれば税理士等とも連携いたします。 本事例のように単に売却するだけでなく、次世代への財産の引継ぎ方が気になる方にも、信託契約が有効である場合があります。 ぜひ一度、ご相談ください。初回ご相談は無料です。

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最終更新日: 2018/08/31
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