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2019-06-04 相続人の中に外国人がいて連絡が取れず名義変更できない(相続、登記)

亡父名義の土地があり、相続人は子である私(A)と、父の先妻の子BとCですが、Cが外国の国籍を取得し移住しており、疎遠だったので居所がわかりません。 同居していた私名義にするにはどうしたらよいでしょう。

相続人の一人の行方が分からない場合の相続手続き

数年来相続登記ができず悩んでいるとのことでご依頼を受けた案件です。

相続により遺産を分ける場合には、相続人全員の話し合いが必要です。 相続人の一人の行方がどうしても分からない場合、 家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任の申し立てをして、 その人と一緒に話し合いをするという方法が考えられます。

本件の場合、相続人A・Bと、Cの不在者財産管理人とで話し合いをすることになります。

ただし、不在者財産管理人を選任して遺産分割の話し合いをする場合には、家庭裁判所の許可が必要で、 Cが少なくとも法定相続分相当の財産を取得するような分割内容でなければ、 許可がされません。

本件では、土地の3分の1の名義をCとするか、Cが戻ってきた時に土地価格の3分の1相当のお金を渡せるようにしなければなりません。

ご依頼者のご要望は何か

本件は、お父様名義で土地を買い、その上にご依頼者Aさん名義の建物を建築して、Aさんの父とAさん家族が同居していたものです。 ご依頼者がお父様の面倒をみていたこともあり、連絡のつくBさんは土地をAさん名義にすることに同意していましたので、 あとはCさんの同意さえ得られれば良いことになりますが、そのCさんが行方不明なのです。

「土地を自分名義にしておかないと自分の子世代に引き継がせることができず迷惑がかかる」と考えたAさんは、 弁護士や司法書士に遺産相続手続を依頼しましたが、Cさんが行方不明であることで何度も行き詰りました。 最後に不在者財産管理人選任の申し立てを専門家に依頼しましたが、 「Cさんが戻ってきた時に土地価格の3分の1相当のお金を渡せるようにしなければ許可はできない」と裁判所から言われ、 金銭的事情により、この方法による遺産分割協議を断念したとのことでした。

何か良い方法は無いかと土地の登記簿謄本を確認したところ、次のことがわかりました。

  1. まず、土地の名義が、売主であるXさんから「Aさんの夫」に変更された。
  2. 次に、土地の名義が「真正な登記名義の回復」を原因として、「Aさんの夫」から「Aさんの父」に変更された。

「真正な登記名義の回復」とは、誤りなどで他の人名義の登記がされてしまった場合に、本来の名義にするために使われる登記原因です。

どのような経緯があったのかお尋ねしたところ、「土地の売買契約を実際にしたのはAさんの夫なので当初は名義をAさんの夫にしたが、 金銭的援助をAさんの父にしてもらったことを考えると名義をAさんの父にするべきだし、そうしないと贈与税がかかると考え、Aさんの父に変更した」とのことで、 売買契約書や領収書を確認させていただいたところ、全て買主はAさんの夫となっていました。

ご事情から考えるに、贈与税のことはひとまず措いておいたとして、 「Aさんの夫がAさんの父からお金を贈与してもらって家を買った」のだから、 あくまで名義人は買主であるAさんの夫であるべきです。

そこで、Aさんに「土地の名義をAさんにするのではなく、Aさんの夫にしても良いのであれば、方法があるかもしれない」とお伝えしたところ、 「子供の代に土地を引き継ぐことができればよいので、Aさんの夫名義になるのでもかまわない」とおっしゃったので、 そのための準備をすることにしました。

死亡した人を相手とする名義変更の手続きと裁判

本件の場合、Aさんの父が存命であれば、「Aさんの夫」から、「本来自分名義になっているべき土地にAさんの父名義の登記があるので、消してほしい」と 「Aさんの父」に対して要求し、「Aさんの父」が協力してくれるのであれば、双方から登記を申請して「Aさんの父」の登記を消すことができ、 「Aさんの夫」が名義を取得することができます。

現時点で「Aさんの父」は死亡していますので、相続人全員であるABCが代わりに協力する必要があります。

しかし、Cさんは行方不明ですので、協力を得ることはできません。 こうした場合、「Aさんの夫」が原告となり、「本来自分名義になっているべき土地にAさんの父名義の登記があるので、消してほしい」 という裁判を起こして勝訴すれば、協力を得たのと同じことになります。

外国に住む人を相手とする裁判

外国に住む人に対して裁判を起こす場合も、日本に住む人を相手に起こす裁判と同様、 住所と氏名を訴状に記載し、送達(訴状を送ること)してもらうことになります。 本件では、一応わかっている外国の住所(最近文書が届いた実績はあるが返信が無い)を記載しました。 もっとも、結局届かず、最終的に公示送達 (裁判所の掲示板に書類を掲示することで送達と同じ効果を発生させるもの。 どうしても相手の居所が分からないことを裁判所に説明して申し立てる。)となりました。

税務の確認

事情に関わらず、不動産の名義が変わる場合、思いもしなかった税金がかかることがありますので、 事前に確認しておくことは重要です。 本件でも、ご依頼者ご本人から、税務署に、「Aさんの夫」に名義を戻した場合の税金の扱いにつき、事前に確認していただきました。

法務局への確認

せっかく裁判に勝訴しても、「その判決文では名義変更できない」ということになってしまっては、全く意味がありません。 法務局に事情を説明し、もし勝訴した場合には問題無く登記できることを確認しました。

裁判の結果

税務上問題が無く、登記も問題なくできることを確認した上で、裁判を提起しました。 外国への送達や行方不明による公示送達などで1年以上の時間がかかったものの、無事勝訴し、 名義を「Aさんの夫」にもどすことができました。

不動産に関するお困りごとのご相談は司法書士へ

不動産の相続に関する情報はネット上にもありますし法務局でも案内しておりますが、 たいていは「日本にいる相続人全員がお話し合いをして一人が相続することに決める」 ことが前提の情報だと思います。

本件ではこうした前提には当てはまらなかったため、 ご依頼者としては「ご自分名義に相続登記をする」ための手続き方法がなかなか分からず、 大変お悩みでしたが、当事務所でお話をうかがったところ、 目的は「ご自分名義に相続登記をすること」ではなく「子供の代に問題無く財産を引き継ぐこと」であるということがわかりましたので、 今回のような解決方法をご提案することができました。

個々のご事情により、解決方法は変わってきます。 お一人で悩まず、司法書士にご依頼ください。

不動産の登記がからむ場合には、弁護士ではなく、 登記の専門家である司法書士にご依頼いただいたほうがよいケースもあります。 裁判が必要な場合には、裁判書類の作成も承ることができます。

当事務所では、初回のご相談は無料です。お気軽にご連絡ください。

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最終更新日: 2022/03/03
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